人間の体というのは、1日の中で、活動する時間帯と休む時間帯が綺麗に分かれています。
次の図を見てみて下さい。
これは人間の体温や心拍数、血圧の1日の中の変動を表したものですが、昼と夜で綺麗にリズムがあることが分かります。
わかりやすくすると、こういうことです。
多くの場合は、朝から体温も血圧も上がりはじめて、体は動くモードになります。
そして夜には体温も血圧もすごく下がり、体は休むモードになります。
最初に載せたグラフを見ると分かる通り、多くの人は午前3~4時くらいに体温も血圧も最低になり、それから上がり始めます。朝7時にもなれば、いい具合に血圧も体温も上がってきている時間であり、スムーズに目が覚めます。
夜は夜で、23時を過ぎるとがくっと体温や血圧が下がってきて、ちょうどよく眠くなってきます。
問題は、体内のリズムと社会のリズムが合っていなくて、本当は体が寝ている時間に無理に起きようとすると何が起きるのかということです。
体はまだ寝ているモードです。体温も血圧も最低ラインの時に、無理やり起きなければなりません。
このため、睡眠リズム障害の睡眠相後退型(DSPS)という、体内時計が極端に夜型にずれている人の血圧を朝に測ると、とても低い血圧を示すことが多いです。(逆に、夜になってもなかなか血圧が下がりません)
体が休息真っ最中のモードの時に起床することは極めて難しく、どんなに本人が頑張ろうとしても、体調が著しく悪化してしまい、起き上がることができません。
ずれているのは血圧や体温だけではありません。精神活動のリズムも、内臓機能のリズムも、全て連動しているので、全ての不調が来ます。(難しい言葉では「外的脱同調」と呼ばれます)
深夜にたくさんごはんを食べて胃もたれした経験がある人もいるかと思いますが、体内時計が著しく遅くずれている人に朝ごはんを食べさせると、まさに深夜にごはんを食べるのと同じことになってしまい、ひどいと吐いてしまったりすることもあります。
そして、夜は夜で、脳や体が絶好調に活動している時間なので、布団に入っても一向に眠れず、ひどいと朝が来るまで眠れません。
ちなみに、「普通の人」でもこのようなことを体験する機会はあります。日本からアメリカなどに旅行すると時差ボケに悩まされますが、その状態が1年中続いているようなものだと理解して下さい。
体内時計がずれてしまう原因は色々あります。
生活習慣もあれば、遺伝的なものもあると言われています。
多くの人が、いま、この分野を研究してくれています。
文責: A Shimura M.D., Ph.D.